column
コラム(月1更新)
外国人の職員を国内に招聘する場合の居住者・非居住者の判定
近年では、多国籍企業等も増え、海外から外国人の職員を招聘するケースも多いかと思います。
前提として、国籍を問わず国外在住者場合には、所得税法上「非居住者」と呼ばれる区分に該当することが多いです。その場合には、国内在住の「居住者」とは異なり、「国内源泉所得」が中心となる課税関係になります。また、源泉税の税額や税体系も異なる状況となります。
ところで、海外から外国人の職員が日本に招聘された場合、「いつから居住者(正確には5年目までは非永住者)の扱いとなるのか?」という問題があります。というのも、所得税法第2条にある居住者の定義は、「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう」とあるから、一見すると判断が難しいと考えられるからです。
結論から言えば、実務上多くの場合には、国内税法上「入国したその日」から「居住者」に該当することになります。これに加えて、「租税条約」が国内税法に優先するので、「租税条約」の内容も確認が必要です。
詳細に見ていくと、所得税法上の「住所」とは、民法からの借用概念にあたります。民法22条の規定によって、「各人の生活の本拠をその者の住所とする」とあり、「住民票の所在」ではなく、家族や資産の所在などの「生活の基盤」によって判断されます。
しかし、近年では国際的な移動が頻繁で、「生活の基盤」の特定は困難なケースも多いです。このことについて、所得税法施行令第14条によって、「国内において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する」場合に「国内に住所を有する」と規定されています。
ここで、外国人が日本に在留する場合には、「在留資格」が必要です。海外から外国人の職員を招聘する場合には、「人文国際」や「企業内的転勤」などの「在留資格」を申請すると考えられます。ところで、この在留資格は、一般的に「1年」以上の期間で申請することが多く、その期間は外国人の身分証にあたる「在留カード」に記載されることになります。つまり、客観的に1年以上の居住が「在留資格」によって認められるので、所得税法上第14条の規定に則り、「入国と同時」に「居住者」と認められるという判断になります。
なお、法律ではないものの、税務通達もこの方向で解釈しているので、税務行政は「居住者」としての方向で動くと考えられます(所得税法基本通達3-3)。
ただし、上記は国内税法の扱いです。「居住者」の扱いについて、国内税法と異なる扱いが二国間の「租税条約」にあれば、憲法第98条の規定により、「租税条約」が優先するので、別途個別の既定の確認が必要です。
アイエクシード税理士法人
岩松