インボイス制度の開始まで1か月を切りました。
準備に追われ、本業部分以外のところで時間を費やさなくてはならない状況に辟易する頃ではないでしょうか。
昨今増えたキャッシュレス支払の普及により、「後で明細に反映されるから別にいらないや」といった形でレシート等を貰わずに済ませてしまう方も多いでしょう。
このような何気ない日常の習慣によって、最悪の場合消費税の仕入税額控除(納めるべき消費税の計算をする上で引くことができる消費税額)が受けられなくなる可能性があります。
それを阻止すべくそこで今回は、インボイス導入後の領収書等の扱いについてご案内いたします。
まずは現行制度ではどうなっているかおさらいしてみましょう。
消費税法上の規定によると、「税込3万円未満の取引であれば、請求書等の保存を要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみでよい」という特例があります。
その上で、クレジットカードの利用明細に関する回答要旨と照らし合わせてみると
①その書類の作成者の氏名又は名称(購入先の店舗名)
②課税資産の譲渡等を行った年月日(購入年月日)
③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(食品等の軽減税率対象品か否か又は両方)
④税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額(購入金額)
⑤その書類の交付を受ける者の氏名又は名称(ご自身のお名前や会社名)
「上記が記載されていることが一般的であり、そのような書類であれば消費税法第30条第9項に規定する請求書等に該当することになる」とあります。
云々難しく書いてありますが、要約すると「信販会社(カード会社)が発行する利用明細・請求明細を領収書として代用可能」という解釈になります。
それがインボイス制度導入後にどのように変わるのでしょうか。
まず、先ほど申し上げた「税込3万円未満~」の特例がインボイス制度導入より廃止されます。
次に、国税庁が出している「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き」によると
【仕入明細書(領収書)の記載事項】
①作成者の氏名又は名称(購入先の店舗名)
②課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号(インボイス番号)
③課税仕入れを行った年月日(購入年月日)
④課税仕入れに係る資産又は役務の内容(食品等の軽減税率対象品か否か又は両方)
⑤税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率
⑥税率ごとに区分した消費税額等
上記項目が必要になります。
最後に、前述の消費税法上の規定と照らし合わせてみると「クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付する請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成・交付した書類ではありませんから、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。」
云々難しく書いてありますが、要約すると「利用明細・請求明細ではインボイスとして認められなくなり、ひいては『発行されたレシート・クレジット売上票の2種類を保管する』ことが必要になる」ということになります。
前例の無い制度が開始・運用されていく上で、どのように進んでいくか不透明な部分が常に付きまといます。引き続き注視しながら皆様へ適切なご案内をすることが、弊社としてできることであると考えております。
出典:
仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6496.htm
カード会社からの請求明細書
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/18/05.htm
適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022009-090.pdf