コラム(月1更新)
日本政府観光局(JINTO)の統計によれば、訪日外客数は2013年の1,000万人から2018年の約2,800万人と直近5年間で、およそ3倍と急速に増加しています。2020年にオリンピックを控えているため、今後もさらなる訪日外客数の増加が予想され、宿泊施設の不足が懸念されています。
そのような問題を解決する仕組みとして民泊が期待されています。 入居率の低い物件や親から相続して放置したままの物件を活用して民泊を検討している方もいるかと思います。今回は、その民泊により生じた所得の税金についてのお話です。
民泊により生じた所得は国税庁の見解によれば原則、雑所得とされています。不動産所得とならない理由は単なる不動産等の貸し付けではなく、一定程度の役務の提供(サービス)が伴うと考えられているためです。
雑所得は損益通算が認められていないため、複数の所得を持つ方々からは嫌われる傾向があります。例外的に、損益通算可能な事業所得又は不動産所得とする場合もあります。そこで、サラリーマンや会社役員が副業として民泊を行うことを前提とし、事業所得又は不動産所得に該当する可能性を検討していきます。
まず、事業所得に該当するためには、事業として民泊を営んでいる事が認められなければなりません。事業として認められる要件は色々ありますが、生計を立てるためにサラリーマンや会社役員としての所得がある時点で厳しいと考えられます。
不動産所得に該当するためには、入居者が退去した後、次の入居者が決まるまで一時的な空き部屋を利用して民泊を営む必要があります。簡単そうに見えますが、民泊を営むためには、「住宅宿泊事業法」等に定められている設備の構造要件や事業者としての業務を満たす必要があり、これがなかなか面倒です。また、これらの管理を一括して受託する業者もありますが、委託費用や委託できない部分の労力等を考慮すると、不動産所得に該当する機会は限定的であると言えます。
したがって、上記前提で民泊が事業所得又は不動産所得に該当する可能性は限りなく低いと言えます。今回ご紹介したケース以外にも様々な形態が考えられますので、民泊の税務でお悩みの際は弊所までご相談ください。
アイエクシード税理士法人 森